書評
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理論物理屋・シュレディンガーの『地頭力』が遺憾なく発揮された名著
1944年に本書が書かれた時、遺伝子のミクロな分子的構造など少しも分かってはいなかったのです。そんな「目に見えないもの」の正体を捉えるために、物理屋はどの様にアプローチするのでしょうか? 本書に理論物理屋・シュレディンガー教授が果敢に挑戦した思考の軌跡が記されています。いま流行りの言葉で言えば『地頭力』が遺憾なく発揮されています。メンデル遺伝学と熱統計力学・量子力学の知識に基づき、エンリコ・フェルミ流の「封筒裏の計算」で(半)定量的評価・推定を行った結果、「遺伝子は安定な構造をもつ一千個程度の巨大分子であり、それは非周期性の結晶というに相応しいモノである。(「非周期性」=暗号文中の文字のような原子配列、「結晶」=原子間の強い結合)」という結論に至ります。これを読んで多くの物理屋さん(クリック、ウィルキンス...)が生命科学分野へ誘われ、実際にDNA構造が決定されるに至った訳です(1953年)。このDNA構造がシュレディンガー氏のイメージ通り、という処が凄い処ですね。
新書版(品切中)と文庫版の違いは、訳者・鎮目恭夫氏が文庫本に新たに「あとがき」を書かれている点にあります。教科書には普通載らない(載せられない(-_-);;)シュレディンガー氏の逸話も挿入しつつ、「生命とは何か」の哲学的な側面の再解釈を披露しておられます。(この"あとがき"は立ち読みできる分量です)
やっと手に入った!読んだ!感動した!
絶版新書に意味不明のプレミアム価格がついていた希代の名著がやっと手に入りました。
それも630円で。感動です。
一気に読みました。
すげえ本です。
お断りとして、私は純文系です。
それでも、世界の森羅万象が知りたい、ありがちなゼネラリスト志向な純文系です。
ですから、この本の言うところが、今現在の最先端科学知識にどの程度外れてしまっているのか、厳密なことはいえません。
でも、これまで読んできたどの量子論の本よりも、この古い本のほうが「本質」が分かった気がします。
「何故、人間は、と言うか細胞は、原子に比べてこれほど大きいのか?」
この本が呈示するほど明快な答えは、なかなかないですよ。
ほかにも突然変異の不連続性(変異前と変異後の個体の中間的個体は全く存在しない)の理由が、量子論の量子飛躍によって見事に説明されたり、
もう、「本当のこと」が知りたい自分にとっては、目から鱗落ちまくりでした。
でも、結局、科学知識に限界のある自分には、シュレーディンガー氏が言う、
生きている物のみに働いている、「今までに知られていない物理学の別の法則」というのが、何を言わんとしているのかよく分かりませんでした。
現代物理学は、生命の原理も、突き詰めていけば非生命に働いている単純な物理法則により完全に説明できる、というスタンスなのだと思います。
でも、もしかしたら、シュレーディンガー氏は、また別のことを考えていたのかしら…などと、妄想はふくらむばかり。
とにかく、このすばらしい一冊を存分に楽しもうと思われる私と同じ純粋文系諸兄の皆さん。
まず、この本の前に、PHP文庫の「量子論を楽しむ本」を読みましょう。
そして、シュレーディンガー氏が当たり前のように述べる「量子論」という不可思議な世界を少し知ったかぶった上で、この希代の名著にあたりましょう。
そうでないと、もったいない気がします。
老婆心ながら…
シュレーディンガーの挑戦
科学書の多くは科学の発展にともないその価値を失うものがほとんどである。しかしその中でも価値を維持するものは存在する。新書、文庫と新装版が登場している本書はよい例であろう。
さて著者のシュレーディンガーはシュレーディンガー方程式の発見者としてあまりにも有名であるが、量子論への懐疑(有名なシュレーディンガーの猫)から一線を退いた人物である。本書で彼は統計力学的なモデルで「生命」を説明しようとしている。詳細は省くがシュレーディンガーによれば「生命」はつねに崩壊に立ち向かっている。こういった描像に感動すら覚える。
もちろん本書で提示された「負のエントロピー」の概念など現在は否定されている要素も多い。しかしロジャー・ペンローズなど物理的な描像(ペンローズは量子論的モデルを用いている)も「生命」に迫ろうとする挑戦はいまだに続いている。そういった挑戦が続く限り『生命とは何か』の価値が失われることはないだろう。