書評
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この理性的な議論が受け入れられるのはいつだろうか
『環境リスク学』の著者、中西準子氏の岩波新書。河川水の利用と汚染について、現状の体系的な記載と整合性のある提案を行った良書である。『環境リスク学』に比べると、データが詳しく提示してある分多少煩雑であるが、テーマに沿った著作であるので、仕方のない所であろう。むしろ、内容の確かさを保証するものとなっている。その分は多少飛ばして読んでも、著者の主張は明白で説得力がある。
著者は、まず、環境対策を、便益と環境保全の2軸の平面で考えて、それぞれが正と負の4つの象限のどれに当たるかを総合的に考える所から始めようと提案している。環境問題と言うと善悪の2値がクローズアップされる現状から考えると、これだけでも大変な進歩だ。河川管理、上水道の水質管理、下水道の設計などで行われている様々な環境対策を、この平面で分類することで、解説しているのは分かりやすい。そうすることで、リスクコントロールに議論をスムーズに持って行っている。
最終的な結論は、どのような水質管理もリスクがあるのだから、一つのリスクにばかりヒステリックにならずにリスクの総和が最小になるように対策を立てましょうと言う、基本的には『環境リスク学』で述べられていた内容を「水」を例にとって述べたものである。ただ、リスクを完全に把握することは出来ないのだから、とりあえずの最良見積もりで行動すべきだと主張しているのが、もう一歩踏み込んでいるように見える。
BSE 問題でも、強度偽装マンション問題でも、この視点さえあればあれほど紛糾する話でもないのにと思うと、このような冷静な思考が広がる事を期待するのは百年河清を待つようなものだと、暗澹たる気持ちである。
夏の渇水時期でも農業用水路にはとうとうと水が流れているのはなぜか?
新書の棚の左から無作為に20冊買ったなかの1冊。
で、結論をいうと、あたり!である。
人口の増加、工業発展、途上国の開発などによる
水不足や水質汚染がいわれて久しいが、
本書は、資源量の観点、循環利用の観点、水質基準の観点から
水資源利用の現状を検討し、リスク管理の重要性を説いている。
夏の渇水時期でも農業用水路にはとうとうと水が流れている。
田舎ではよく見られる光景なので別段不思議に思ったこともなかったが、
水道が給水制限をしているのに、なぜ用水路には水があふれているのか。
確かに妙だ。
これは利水権を適切にコントロールできていないことが原因であるという。
水不足の原因は実は絶対量の不足ではなく、利用効率が最適化されていないことによる、
という事実をはじめて知った。
また水質基準の章では、有害物質の基準値の決め方が非常に難しいことも知った。
例えば、水道に含まれるある有害物質の許容量を決めるのに、
発ガン率が10万人に1人、というレベルにするとしよう。
この基準値を実験で測定する為に必要な実験動物はなんと600万匹。
費用も1兆円を超えるという。
従って、現在の基準値は推定値。
誰も直接証明していない。あくまでも仮説なのである。
書名の「水の環境戦略」はなじみのない言葉だが、
単に企業や行政の不備を告発するということではなくて、
上手にリスクをコントロールしながら、
人間の活動と水資源の保護を両立させるための戦略を考えよう、
ということである。
新書の醍醐味は、その道の専門家による一般向けの啓蒙にあると思うが、
その意味で本書は新書の王道をいくものである。
環境問題に関心をお持ちのかただけでなく、
この方面にまったく興味も知識のない方にも、
純粋に知識欲を満足させられる一冊としてお勧めできると思う。
環境問題の本質とは…
”地域環境問題”と”地球環境問題”との違い。
塩素消毒とオゾン消毒を用いた水道水。
水道水のリスク管理。
水利権と渇水問題との関連性。
一部の利権を守るためだけに、どれだけの犠牲が生じていたのか。
意識を改める必要性を感じました。
本当に熱い!!
熱いメッセージとか書いてあるけど本当に熱い!!
10年近く前の本なので情報として少し古い感じはありますが、
現代の日本が抱える水問題について恐ろしくなるようなことが書かれています。
でも、おそらくこれが現実だったのだと思いますし、
これだけの内容の多くが改善されたとは思えません。
是非この本を多くの方に読んで欲しいと思います。
なぜなら、21世紀なった今だからこそ
自分たちの後に続く世代にかけがえのない自然を残す為に、
今知っておきたいことがここにかかれていると思うからです。
充分に納得
水というと味や水質だけが語られるが、この本は水の全く新しい側面を見せられ、しかも論証もきちんとして納得できる。水問題は水の乏しい地域や発展途上国の問題と見られがちだけれど、実際、日本でももっと真剣に考えなくてはならないと、改めて認識。水だけではなく、もっと様々な分野でこのような本を読んでみたい。