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格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

出版社 岩波書店
著者 橘木 俊詔
発売日 2006-09

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Amazonレビュー

 「格差社会」について、現状やその是非に関する著者の意見をコンパクトに整理した本です。
 この問題については、生活苦にあえいでいる人たちや企業の労働現場の実態を取材するタイプの本が多いですが、この本は全くそういう要素がなく、統計数値を用いて、いわば「大所高所」から問題を論じています。

 著者の意見は、簡単に言えば、「日本は格差社会化している。そしてそれは結果の平等だけでなく、機会の平等も確保されない不公平な社会になりつつある。」、「日本は国際的にみても『小さな政府』なのに、小泉改革はさらに小さな政府をめざしている。」、「市場重視の競争社会は、貧困層にとって問題であるだけでなく、社会全体でみても弊害が大きい。政策を転換すべきである。」ということかと思います。
 平易な説明で、分量も多くなく、無理なく簡単に読めます。
 私は、かつては「小さな政府」論者でしたが、著者の考えには説得力があるように思いました。
 
 この本が出版されたのは、2006年9月。
 現在は民主党への政権交代があり状況は相当変わっていますが、(1)小泉政権時の政策、(2)その後の自民党政権の政策、(3)民主党政権の政策という変遷の中で、私自身、個々の政策に対する意見はあっても、「大きな政府・小さな政府のどちらを目指すのか」や、「所得の再分配はどうあるべきなのか」など、大きな視点で考えることが少なかったと反省しました。
 また、貧困問題も金融不況以降、いっそう深刻度を増しています。
 本書は、そういう面で、いま読んでも考えるきっかけになる良書と思います。 
コンパクトにまとまっているので時間の無い方にも手軽に読めると思います。

貧富の差が大きくなってもセーフティネットがあれば大丈夫という理論が
ありますが現実的には逆方向へ向かっています。

貧困層が増加すると、犯罪などの社会不安が増大
教育レベルの低下により健康の自己管理レベルも低下すると
思われます。
失業者の放置は社会の無駄と思われ
効率性を上げている社会には見えません。
結局は社会の負担を増やしそれは
中間層にかかってきます。
そして中間層は貧困層へ落ちることとなります。

先進国の中では、かなり小さい政府になりつつある日本ですが
更に小さな政府を目指しているのが現状かと思われます。

子供を育てるだけの経済能力の無い人間を増大させ
少子化問題がなんとかなるわけがありません。
格差社会というものがあるのだろうか。

高度経済成長で固定されていた社会構造が、
成長が終わって、崩れていく部分と、
成長が終わったのに、同じままで進んでいる部分と、
2つの間の格差が広がっているというのが実情ではないだろうか。

その背景、根拠、仕組みなどを、固定的に見るか、
時間の流れでみるかで、立場の違いが生まれるかもしれない。

格差社会というものとして固定してみると、現象を見誤らないだろうか。
格差社会として機能している仕組みを見出すとよい。
総論賛成、である。
多分、基本的な考え方は、私もこの著者と同じ。

ただ、各論部分にややトンデモめいた部分が散見された気がする。

例えば p. 140で挙げられているスウェーデン人のプロ・テニスプレーヤー、ビヨン・ボルグの話に関する以下のくだり:

「現役でプレイをしている頃、所得税率が高過ぎるとして、節税のために税率の非常に低いモナコに住居を移しました。しかし、現役引退後しばらくしてから、再び母国のスウェーデンに戻ったのです。その理由は、確かにスウェーデンは税や社会保険料の負担は重いが、恵まれた社会保障制度は老後の生活に安心感があるので、自分はそれを求めてスウェーデンに住む、というものでした。この逸話をどう評価するのか、それは人によって異なると予想しますが、海外逃避する日本人の富裕者の答えも聞いてみたいものです」

ここなんて、日本は国の規模も世代人口構成もスウェーデンとはまるっきり違うので、スウェーデンと日本を比較するのは見当違いなのでは…と首を傾げてしまった。

その他にもところどころ、細部で気になる部分が。読み終えてから考えていたのだが、どうもこの著者は「超高齢社会」時代へと突入しようとしているというこの国最大の問題に関する認識が不足しているんじゃないか、そのせいで読んでいて違和感を覚えてしまったんじゃないかと思う。

朝日新聞社の「ロスト・ジェネレーション」論と重なるが、以下のくだりについては全く同意。25歳〜35歳世代の若年非正規雇用者・フリーターの多さは大問題で、国には早急に、もっと実効性のある支援策を打ち出す義務があると思っている。

「フリーターしかなりえなかった世代の人々は、いわば機会の不平等のデメリットを直接受けた、と解釈することも可能です。就職先を探す時期にたまたま日本経済が大不況だったので、やむをえずフリーターになったのであれば、機会が与えられていなかったと言えます。このことを償うのは、国民の代表である政府の仕事ではないでしょうか」(p. 170)
 1943年に生まれ、欧米の研究機関に在籍し、経済企画庁の研究官、日本銀行客員研究員、経済産業省ファカルティーフェロー、日本経済学会会長等を歴任した研究者が、2006年に刊行した本。日本では1980年代以降、セーフティネットの縮小の下で、所得分配の不平等化が進み、貧困者(母子家庭、高齢単身者、失業給付を受けられない若年層)の増加とその所得の低下の深刻化が見られ、OECD加盟国の中でも不平等度が高い国となっている。その原因としては、第一に長期不況による失業者の増大、第二に主として企業側のコスト削減要求による非正規労働者の急増(過当競争やサービス残業の増加も影響)、第三に賃金決定の分権化と成果主義賃金の導入、生活保護給付額以下の最低賃金設定、第四に累進課税の緩和、社会保険料の増額と給付の削減、第五にそれらの背景にある新自由主義的構造改革(経済効率は上がるが、分配は不平等化)が挙げられる。他方、富裕層は経営者・医者等から成るが、彼らには手軽な金稼ぎや節税への志向が見られ、人材配置の歪みも顕在化しつつある。教育予算削減の下で、親の所得格差が子の教育格差につながり、ひいては希望格差、健康格差につながる傾向も強まりつつあり(階層の固定化)、また無駄の多い公共事業に代わる地域支援策もないまま、地域間格差も深刻化している。小泉首相のように、開き直って格差拡大を容認する発言も目立つが、行き過ぎた格差は資源のロスや犯罪の増加等を帰結するという立場から、著者は特に貧困対策の必要性(職務給制度、最低賃金の改善、公的な職業教育、医療・介護・教育の充実、中央による地方の自立支援、生活保護基準の緩和、失業保険改革、税金の累進度の回復など)を強調する。説明不足に感じられる箇所もあるが、データに基づき格差社会論の基本をコンパクトに論じた本として、お勧めしたい。