書評
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Amazonレビュー
文系頭の私にしっくりきました
美文に惚れたと書いておられるレビュワーがいらっしゃいますが、同感です。
専門家らしい皆さんは物足りないと書いておられるようですが、高校までの生物の知識で読む文系頭にはぴったりです。
理系の方には無駄に見えるらしい情景描写など、わたしの心には心地よく沁みこみます。
憧れや興味を持ちながらも、普段知ることのできない生物学の世界を、美しい文章で案内してくれた一冊です。
少年時代の想い出をつづったエピローグまで、十分楽しめました。
すべての医療者に薦めたい
私は医者です。題名からウィルスの話かな?と思って書棚から手に取った。帯に「新書大賞」「サントリー学芸賞」ダブル受賞!!と書かれてあったのでさらに興味がわいた。読み始めたら確かに止まらなくなった。
ウィルスは生物か物質か?に始まり、DNAの2重らせん構造発見に至る科学者たちのスリリングな物語に昇華して行く著者の力量に敬服した。分子生物学者としての米国での研究生活体験を通して描かれていて、科学へのあくなき情熱を感じ同感した。各種のタンパク質のアミノ酸配列を決定して行く過程の重要性をジグゾーパズルに例え、たった一つのピースの欠損が意味する生体への影響についての記述はとても分かりやすく、生命活動の素晴らしさを改めて実感することになった。
本書に対して賛否両論があるようだが、題名にとらわれる必要はない。生命科学に対する知的好奇心を満たすに十分な読み物と思う。私は臨床医として科学者として本書を研修医や同僚などすべての医療者に薦めたいと考えている。
美文に惚れた…
砂浜で小石と貝殻をみつけた時、人はどちらにも美しさを認めながら、その間にある「生命体とそうでないもの」の境い目を読み取ることができる。それを隔てるものは何だろう。
こういったシンプルな問いかけから始まるこの本は、端的に、愛想無く描写すれば「二重らせん」の発見の歴史ということになる。
研究者たちが疑問を持ち、それを解明しようとする姿勢には読んでいてたまらない好奇心を覚える。そこには「知ろう」とする、人間ならではの根本的な姿勢が描かれているからだ。
ちょうどこれを読んでいる時にアーサー・C・クラークが没した。2001〜の中で象徴的に描かれるモノリスによる啓示、ヒトを他の生物から分ったもの、それは「道具を用い、それを発達してきたこと」だった。
それを象徴的に描いた本書はこの短かさの割にはとても充実した内容と言える。それに、
生命という名の動的な平衡は、それ自体、いずれの瞬間でも危ういまでのバランスをとりつつ、同時に時間軸の上を一方向にたどりながら折りたたまれている。
なんという美文!
この種の本としては例外的ともいえる滑らかで、それでいてスコラティックな描写が続き、読者を飽きさせることがない。第一回科学ジャーナリスト賞の受賞者の面目如何、である。
生命とは流れである
「生命とは何か」この答えを探し続けた、分子生物学と筆者の物語。
アメリカ時代の経験談がおもしろい。
研究者の最優先事項は、国の研究予算や民間の財団や寄付などを確保することであり、その研究費を確保した研究者に研究スペースが割り当てられるそうだ。
次に語られるのは、20世紀最大の発見、DNA二重ラセン構造の発見にまつわる疑惑。ある研究成果の価値を判定できるのは本人を除くと、同業者でしかない。一つのDNA研究結果を覗き見ることが出来た同業者が、後のノーベル賞につながる論文を書くことになるとは驚きである。
1955年の、その世紀の論文の結果、ひとつの答えにいたる。生命とは、自己複製を行うシステムである。
ところが、その後の研究で、それだけではすまないことが分ってきた。
特定のアミノ酸を与えられた成熟ネズミは、排泄せずそのほとんどを体内のどこかにとどめる。しかも体重が増えない。体内にある別の既存分子が体外に捨て去られたわけだ。つまり、半年後には、分子レベルでは我々はすっかり入れ替わることになる。筆者はこう語る。生命は動的平衡にある流れである。
話は時間・空間を飛び回るが、おもしろいエピソードがちりばめられていて、分子生物学の現在を知ることが出来るコンパクトな一冊。
ほんとはわかってる。
これは、生命とは何かというたいへん根源的であり、今でも結論の出ない普遍的問題に
分子生物学者である著者が真摯に挑んだ軌跡を記した、ある意味知的冒険の本です。
従来の生命の定義では、”自己複製を行う”という特性が主流だったようです。
しかしそこで、ウィルスという自己複製は行うけれど、それ以外は全く生物としての
特性を持たない、かなり物質に近い存在からこれまでの生命の定義が疑われます。
そこに、量子力学の祖であるシュレディンガーの生命への問い、”原子はなぜそれほど
に小さいのか?”が浮上します。これは、生物の体はなぜ原子に対してこれほど大きい
のかという問いのことであり、要するに、生命がその秩序を維持するためには、生命を
構成する原子は、熱運動により起きる例外の発生を統計学上致命的にならない範囲内
に納めるために、生物の体は原子に対して有意に大きくなければならないということで
す。これは、言い換えると、生命とは増大するエントロピーに抗して、秩序を維持する
システムであるということになります。
では、その生命の維持を行っているメカニズムとはどのようなものなのか。
シュレディンガーは、そこに物理学的原理を想定しますが、結局説き明かすことはでき
ませんでした。
そしてここに、孤高の天才ルドルフ・シェーンハイマーが登場します。
彼は、生命とは代謝の持続的変化であり、生命秩序は、エントロピー増大による例外の
発生よりも早く、自ら破壊と生成を繰返す流れによって維持されることを見出します。
著者はこれを、”生命とは動的平衡にある流れである”と再定義を行い、秩序を破壊し
平衡状態を保つ生命のシステムのメカニズムを探求していきます。
そして著者は、そこに様々な生命の不思議を見ることになります。
それにしても、著者の文体は流麗であり、そこはかとない品性を感じさせる文章だと思
います。この流れるような文章は、本書でも示される生命の破壊と再生の流れをを含む
自然そのものの壮大な流れを連想させ、分子生物学的には解明できていない生命の仕
組みを、著者は無意識的に感じ取っているのではないかという感じもしてきます。
後半の生物学的説明は、私には少し取っ付き難いものでしたが、ある遺伝子を完全に破
壊しても生物に異常は発生せず、部分的に破壊したときに異常となるなど、生物が単な
る機械でないことを示すエピソードは興味深いものでした。
この本を読んで、個人的にはシュレディンガーが否定した、非物理学的な超自然的要因
による、生命システムの維持メカニズムが存在するように思えました。