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姑獲鳥(うぶめ)の夏 (KODANSHA NOVELS)

出版社 講談社
著者 京極 夏彦
出版日 1994-09
書評
姑獲鳥の夏
本読みな暮らし
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Amazonレビュー
読み物としては面白い。ミステリとしてはどうだろうか。
簡潔なレビューにします。

レビュアーについて:
-大学生
-文学好き
-本格ミステリ好き
-ミステリに関しては多くの作品を読んでいます。

本作を読むにあたって気になるかもしれない点:
-読みづらい文章か?→確かに多少一般的ではない言葉などでてきますが、全体としては非常に読みやすいと思われます。中学生辺りからなら全く問題はないと言えます。
-長くて疲れないか?→京極氏の作品は長いので有名ですが、基本的には内容がとても魅力的なのでがんがん読んでいけると思います。
-怖い・グロテスク?→そういう描写は多少ありますがそれほどではありません。ホラーやグロ小説ではないのでご安心ください。

良い点:

-題材が面白い。京極氏らしい和風で妖怪ちっくな(?)素敵な世界観があります。
-キャラクターが魅力的。漫画やアニメのキャラクターのように、とても個性的な登場人物が多いです。だからと言って非常に非現実的になるわけでもなく、読んでいてそれぞれの特徴が浮き上がって来るので非常に面白いです。
-小ネタ・うんちくが面白い。へぇ、とかほぅ、とうならせてくれる登場人物同士の会話が多いです。なるほどそれは考えたことはなかったなぁと思うような個所も多々あります。こういった小ネタも物語を暗示していたりするので後々気づいてにやりとします。
-すっきりしている。これはトリックなどとは別に、物語として完結しているという意味です。次の作品に続いている、ということはありません。安心してこの一冊だけを購入しても問題ありません。

残念だった点:

-ミステリーらしさがあまりない。確かに物語冒頭あたりから「謎」は出てくるし、それを解くのが本作品の趣旨です。しかし、いわゆる典型的なミステリのように証拠品探しはありません。聞き込み捜査的なものはありますが、これも微妙といったところ。しいて言うならば、「読者参加型・挑戦型」のミステリーではないですね。
-超常現象的なところがある。リアル志向な方にはちょっとこの点は気になってしまうかもしれません。とはいえそこまで物語に影響を与えるわけではないのですが、本格的なミステリ志向の私にとっては「うーん、それってアリかなぁ?」と思ってしまいました。

総括:

-読み物としては非常に面白い。楽しく読めますし、がんがんページが進みます。
-本格的なミステリーではないです。トリックは「なるほど」と思えれば、同時に「それってアリかなぁ」とやはり思ってしまうものでもあります。
一気に読ませるパワフルな小説です。
600ページを越える厚さで、読み手を威嚇しているように見えるかもしれません。
あまりの厚さ、重量感から、この本そのものが殺人事件の凶器になりそうで怖いです(?)

最初の100ページは、人間の意識の話です。
ここはある程度この分野の評論などを読みなれていないと難しいと思われます。
ただ、これは必要な枕なのです!この部分なくしては、謎解き部分の面白さが半減します。
ちなみに私は、ここを読んだ時に、自分の外界認識がぐらつかされ、
女の顔が隙間から覗いているのではないかという妄想に取り付かれ、少し怖かったです。

謎解きの部分は、20ヶ月妊娠している女、その姉、両親、同居人の
過去、生い立ちほとんどすべてが解明されます。そこで読み手は憤り、
また、極限の悲しさを体験することになるかと思います。
語られてきた要素が解決に向けつながっていくのを読む快感を得ることもできます。
特にこの部分は面白くて、飽きっぽい私ですが、夢中で読みました。話は悲しいのですが。

謎解き役の京極堂こと中禅寺秋彦は皮肉屋です。
しかし、彼の頭に入っている知識量、それをつなぎ合わせる的確かつ柔軟な思考力は
驚嘆に値しますし、読み進めるうちに、
皮肉屋の仮面をかぶっているだけで、とても優しいやつなんだと分かります。

1作目は特に、京極堂の魅力が炸裂しています。面白いです。
読者に対する憑物落とし?
分厚い本の多い人だな、という印象しかなかったこの作者の小説を、初めて読みました。まんまとアニメ(「魍魎の匣」)から入りました・・・。
この本も分厚いです。でも一気に読めました。冒頭で長々と続く認識論?からして、「へえー」と感心してしまいます。

日常と非日常、普通の人と「憑物筋」の人は、まったく別個にあるのではなくひとつのものの違った面にすぎない。だから「この世に不思議なことなど何もない」。
一見異常に見えるものも、単にそれ自身の論理に従っているだけで、存在する場所はみんな同じ「この世」・・・その主張は真摯なものだし、共感できました。まっとうです。

でも! だからこそ、事件のこの顛末はなんだかちょっと・・・。
トリックにあたるもの自体は当然の流れによるものです。でもそれがシステマチックというか。そういうことかと理解はできるだけに、重みを失ってしまうというか。
結局やっぱりこっち(探偵側と読者)の理屈で謎解き?と思ってしまうほどに、解説がわかりやすく、てぎわよく進む、ということなのか。
そもそも、「この世に不思議なことなどない」に限っていえば、謎が解かれることはこの話に本当にふさわしいのか? 陰陽師探偵・京極堂は、一貫して非日常的なものにフェアな態度を取りますが、認識を変えることによって不思議だったものが不思議じゃなくなる=憑物落とし・・・というのは、その不思議だったもの本人にとって救いになるの?
そのあたりに思うところがあるからこそ、京極堂自身も謎解きに乗り出すのを渋るのだろう・・・ということは読み取れるようになっていますが。

いかに事件を解決するかが肝心のミステリであるにもかかわらず、そんなことを考えさせられてしまいました。もしかすると、読んでいるうちに事件の関係者たちに同情してしまうせいかも。
そういう意味では、無意識に持っている差別的な感情を読者に気づかせてくれる、啓蒙的な価値もある一冊です。読者も憑物落としされるといえるかもしれません。なんかちょっとすっきりしないものが残るにしても・・・。
六百ページ……
内容に深さもあり、謎解きも「なるほどね」と言わされる。序盤の認識論についての議論は、読書慣れしていないと辛いかもしれない。

難しいからと言って逃げずに中盤まで読むことが出来れば、最後までは一直線の流れにのって楽しむことが出来る。

読み切るのに、だいたい6〜8時間は必要かなと思います。
横溝正史風ウンチク満載のミステリ小説
京極夏彦というと「妖怪」とか「おどろおどろしい」というイメージがあり、さけていましたが、あにはからんや「妖怪」はあくまで象徴的な存在であり、京極堂はあくまで、論理的に事件にいどみます。時代が昭和中期、戦後間もない時期ということ、また内容が結構陰惨なことから、横溝正史を連想させますが、妖怪のなりたちや歴史、史実など膨大な知識をベースに事件に挑むミステリ小説です。文系、森博嗣というかんじでしょうか。その厚さ故、レンガ本などと称されますが、ウンチク部分が多い分さほど苦もなく読めます。姑獲鳥の夏は、20ヶ月出産しない女性とその夫の失踪をあつかった事件ですが、事件のトリックは割とかんたんにわかります.とにかく京極堂のウンチクおよび人間そのもののおぞましさを楽しむ小説です。
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