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プリオン説はほんとうか? (ブルーバックス)

プリオン説はほんとうか? (ブルーバックス)

出版社 講談社
著者 福岡 伸一
発売日 2005-11-18

この本に関する書評

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Amazonレビュー

プリオン病について詳しくは無いのですが、狂牛病など、結構怖い話しであったのに、なんとなく忘れ去られているように感じましたし、正直なところタンパク質が病原体という話しが今ひとつ掴めなかったので、興味沸きました。


プリオン病についての知識を様々な角度から(今となってはノーベル賞を獲っているほどのある意味「定説」についてであっても、その歴史的経過についてまで、肯定側についても、否定側についても詳しく)説明してくれます。科学的根拠に至った研究論文のポイントや、その研究過程を詳しく解説してくれます。そのどれもが私には新鮮で、説得力ありました。


本書は著者である福岡さんも述べていますが、プリオン説の解説でもなければ啓蒙書ですらなく、虚心坦懐に様々な面からタンパク質病原体というノーベル賞評価への再検証を求めようとするものであって、そのためにはプリオン説の解説も成り立ちも、その過程も、実験の意義までを、素人にも分かり易く説明出来ている本です。果たして本当にタンパク質そのものに病原性があるのでしょうか?というミステリー仕立てにもなっているので、そういう視点からもオススメです。


非常に恐ろしくも身近な問題でもある食に関連する科学的な話し、科学が科学的であるための議論の大切さもより深く理解できる、そんな本です。これまでに読んだ福岡さんの文才はそれほど強く前面には出ていませんけれど、それ以上に科学的データを重視した話しには心動かされるものもあります。特にC型肝炎ウイルスの未だ未発見の記述(単体での話し)も非常に面白く感じました。科学界のいろいろな軋轢のような、ダークな面についての記述も面白かったです。


科学的なものに興味のある方、食に興味のある方にオススメ致します。
 プリオン説は仮説にすぎない。それは、高度に精製された異常型プリオンを健康な個体に注入しても発症しなかったからである。著者は、原因が特定されていないので、特定危険部位さえ除けばあとは食べても大丈夫という考えは危険であると言う。月齢20ヵ月以下の牛でも、危険性は十分あるのだ。
 読み物としては、非常に面白い。プリオン説の説明に始まり、その弱点を指摘し、別の原因の可能性を探る。そこには、謎解きのミステリーを読んでいるような知的興奮がある。狂牛病の騒動は、もう下火になってしまったが、この本を読むと、まだまだ輸入牛肉にも気をつけなければならないことを思い知らされる。
 プリオン説を唱えたのはプルシナーという科学者である。彼は、その功績でノーベル賞を受賞している。しかし、この本で指摘されるように、その理論にはいろいろな問題点があることが分かる。権威ある賞を取ったからといって、必ずしも信用できるとは限らない。権威をあまり信頼しすぎるのも考えものである。プリオン説はその好例であろう。
 プルシナーは、研究のデータの改ざんまではしていない。しかし、自分に都合のいいようにデータを示そうとしたのは確かである。彼のプリオン説は、最初は完璧なものだと思っていたのだが、ひとつひとつ検証していくと、証明されていない部分が意外に多いことに気がつく。ノーベル賞まで取った科学的な説が当てにならないというのは驚きであった。この本からは、真の科学的・客観的な視点を持つことの必要性を教えられる。
学術論文では、反証が行われる場合が
ありますが、ここまで丁寧に言葉を
つくして検証するということは
珍しいと思います。

プリオン説を検証する過程を知ることで、
プリオン説に対する理解が深まることも
もちろんですが、データの検証プロセスを
共有しているような気分になります。

知的好奇心をくすぐる本です。
『生物と無生物のあいだ』の福岡先生の前著。
BSEの原因はプリオンだとされているが、実はこれ、厳密に証明されたわけではない。そもそも、「病原体プリオン」の分離にはまだ誰も成功していない。コッホの原則から見れば、まだ病原体・病因の解明には至っていない。プルシナーという学者がプリオン説を受賞理由としてノーベル賞を受賞したが、学問的業績というよりは巧みに「プリオン学派」を形成した政治力が影響しているのではないか、とも言う。

と、内容は刺激的だが、『生物と無生物のあいだ』がそうだったように学問のあるべき姿を追及した真摯な一冊。生物学の基本が分かる。科学は進歩したけど、病原体の特定って、まだまだ非常に地味でたいへんな作業なのね。
 イギリスで猛威を振るった狂牛病。感染症と思われたが、病原体として細菌も、ウイルスも、その痕跡すら見つからなかった。真の病原体は、生物学の常識では感染性病原体として振る舞うことなど考えられなかった「タンパク質」そのものである...。
 これが現在の主流となっている「プリオン説」であり、提唱者のスタンリー・B・プルシナーは1997年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。

 本書の前半では、プリオン説が成立するに至る背景が手堅くまとめられています。
 まず、イギリスで狂牛病が発見され、大きな問題に発展するまでの経緯と背景が説明されます。続いて狂牛病の原因とされるプリオン概念の誕生が提唱者プルシナーのユニークな人物描写と共に語られます。最後に、プリオン説を後押しする多数の研究成果が提示されます。
 余程の専門家でなければ、ここまでの記述で「プリオン説に疑問の余地はない」と考えるでしょう。

 ところが後半から著者は、プリオン説に強力な異論を唱え始めます。前段で紹介されたプリオン説を支持する研究成果を別の視点から洗い直し、問題点が鮮やかにあぶり出されます。著者は狂牛病の原因が未知のウイルスである高い可能性を示唆しています。

 著者自身は反プリオン説の立場で研究をしています。そもそも本書は、プリオン説にも疑問点が残っていることを一般書で示すことで、狂牛病の確たる原因を探求する学徒が少しでも増えてくれたらいい、という著者の願いから生まれています。後半の反証部分は、分子生物学の専門用語が飛び交い極めて難解ではあるのですが、分からないながらも私は、あたかも犯人のアリバイを崩していく刑事の推理をたどるような、スリリングな感覚を味わうことが出来ました。

 著者は反プリオン説の立場ではありますが、読者が本書により「プリオン説はウソ!」と思い込むことは、著者の本意ではないでしょう。また、著者は本書中では少しだけ牛肉輸入問題に言及していますが、食糧政策においてはリスクとメリットのバランスを評価することは必須であって、本書はそこまでの考察はされていない為、本書だけから牛肉輸入の是非を判断することも避けるべきだと思います。

 狂牛病の様々な背景の理解を得られた点、研究者の論理的な思考に触れられた点、仮説を立証することがいかに難しいかを垣間見た点など、とても楽しめた一冊でした。