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悪人正機 (新潮文庫)

悪人正機 (新潮文庫)

出版社 新潮社
著者 吉本 隆明 糸井 重里
発売日 2004-11

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Amazonレビュー

吉本隆明(よしもとばなな のお父さん)と、糸井重里との
対話本。対談形式ではなく、お題ゴトに2人の文章が
分かれているので読みやすい。

夏目漱石を例に出し、本気で遊んでいる人が勉強もすると、
もの凄くよいものが出来あがる。
「鈍」の概念についての説明。

机にかじりついて、勉強ばっかりしていても、
やたらと遊んでばっかりいても、
クリエイティブなものは創れませんよね。

「わからないのに、わかっているように言うことを、
とにかく警戒すればいいんじゃないか」

あー いるいる。 皆さんの周りを見渡してください。
こーいうこと言う、大人ぶっている人がいませんか?
 8年前の著作なので、やや古さを感じるところがないではない。吉本の物の感じ方、考え方が聞き手の糸井によってうまく引き出されているなと、思う(聞き手であっても糸井の発言は本書に一切収録されていない。ただテーマ毎に糸井は吉本の語りの印象を短文にしている)。他のインタビュアーだったらこう言う受け答えは期待できなかったかもしれない。糸井の勝ちだなと、思う。それはそれとして、最後の『「お金」ってなんだ?』について、こう吉本は言っている。「そもそも、返すとか借りているとかってことが気になっているようじゃ、お金についての才能がないと思ったほうがいいでしょうね。本当にお金の才能のある人は、赤字でもちゃんと生活しているし、会社が赤字でも、そんなことはどうでもいいんだっていうか、会社なんて赤字でもやるもんだって思ってる。やっぱり赤字っていうのはできるだけ減らさなきゃと思って、ムダな電気は消せとか、水道は出しっぱなしにするなとか、そういうこと言っているような経営者は落第ですよ(笑)」たしかに。そのあと、「だから、借金の返済を脅かされているみたいに催促されて、それでほとほと困って、で、まあ、いちばん極端なのは、にっちもさっちもいかないって自殺しちゃうとかね。そういうのはやっぱり、お金についてはよくわからなかった人でね。」というわけである。なんとなく脱力するが、でもこういう、金の縛りに自分もあって、ああツボにはまっているなと。読むとどれかひとつ、ふたつツボにはまる吉本を見つけるのもいいかも。

吉本隆明の本を一度も読んだことがない自分にとって、糸井重里との共著ならとっつきやすいだろう、と考えたのがきっかけ。

吉本隆明。
思想界の巨人。

でも私は彼のことをほとんど知らない。
哲学的な語り口とイデオギーと言うイメージが重なって、あえて近づかなかったという方が正しいかもしれない。
知っていることと言えば、吉本ばななの父親。
しかし、糸井重里は吉本隆明のことを尊敬しているらしいと知ってから興味が湧いた。
もしかして自分にも理解出来るのだろうか。
そして、親鸞にも少々興味があった。
そこで手に取ったのがこの本。
しかし、書名に反して親鸞は全く関係がなかった。

あるテーマに従って、吉本隆明が語ると言う形態の本。
各テーマの最初には糸井重里の「手引き」のような文章がある。
吉本初心者にとって、おそらくこの本は「正解」だったのだろう。
なぜなら、おそらく出来るだけ平易に答えているであろう吉本隆明の言葉の内容が、文章の平易さほどには読む者には平易には伝わらないからだ。
これが糸井の手引きがない内容であれば、と考えると二の足を踏んでしまう。
やはりむつかしいぞ、吉本隆明。
もう少し修行が必要かもしれない。
 ビートたけし・泉谷しげる・吉本隆明。この3人は東京下町育ちで、塗装業、大工、船大工という職人を父に持ち、そろって下町言葉を捨てず、並外れた業績をなしても庶民感覚を失っていない人たち。本書も糸井重里のインタヴューに答える形で、知の巨人だというのに生活レベルで喩えを持ち出すので、思想というより人生訓という感じがして好感を持てる。
 吉本の著書は若いころはがんばって読んだものだ。著述には文章執筆の気負いと精確さをねらうのと思索の現場というものが詰め込んであってかなり難解なところがあったものだ。
 この本によって吉本とひさしぶりに再会してみれば、それら著書の現在的な結論が簡潔的に述べてあって、彼のこれまでの営為が分かりやすく俯瞰できた。その中には感覚的な表現も混入してあって、それは懐かしいかつての著書へリンクすることがまかせられていて、それなりに読み応えがあった。
 すごいな、と思ったのは、高齢になっても若いころの自分の著述してきたことをしっかり覚えていて責任を持っていることだ。
 オウムや黒田寛一など危ない名も出てくるが、こういうことには感覚的な嫌悪感など持ち出さず謙虚に、真摯に取り上げている。その逆にタイトル「悪人正機」の由来に繋がることだが、正義を他人にまで押しつけ社会全体が一色に染まらないと気分が悪いという人たちへの嫌悪感も健在で心強い。将来「単一民族」意識のある日本が戦争などヘンな方向に向かうとき、このような人物が再来することを願ってやまないと思ったものである。
 彼を中学校へ招いて放課後の学習会をお願いするなら、彼がどんなにかみ砕いて話をしたとしても理解できないかもしれないが、彼に接した子どもたちには人生上の事件になり、進路を左右することは間違いない。ちなみに教科は、数学、理科、社会、国語かな。私立なら宗教も。
 吉本さんが哲学的課題について答えてくれています。その中で、吉本さんは「教育」を心配しています。特に中学と大学。他の本でも書かれていますが、吉本流教育改革(大学編)を2つ提言しています。1つ目は、教授が強制的に他の大学で教えること。2つ目は、学生が他の大学へ行って自由に単位が取れること。これによって、大学に対する必要以上の憧れが薄れ、少しずつ世の中の価値観に変化が起きるのではと述べられています。やはり教育は大学から変わっていくのが自然かもしれません。
 最初は理解しづらくても、徐々に体全体に響く浸透力のある本です。吉本さんに関心を持った方にまず読んでほしい一冊です。