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ポプラの秋 (新潮文庫)

ポプラの秋 (新潮文庫)

出版社 新潮社
著者 湯本 香樹実
発売日 1997-06

この本に関する書評

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Amazonレビュー

湯本香樹実は「老い」や「死」という暗く重いテーマに正面から
正直に向き合っていると思います。
「夏の庭」も「西日の町」も同様です。
核家族化した現代社会において、子供から見る老人とは、
自分より遥かに死に近い、遠い存在であるが故に不気味な存在なのかもしれない。

夫を失ったばかりで虚ろな母と、もうじき7歳の「私」。
二人は夏の昼下がり、ポプラの木に招き寄せられるように、
あるアパートに引っ越した。
「あの世の誰かに手紙を届けてあげるのがお役目」という大家のおばあちゃん。
幼くして父親を無くした「私」は、父親の死をうまく受け止められないままに、
父親へ宛てた手紙を一生懸命書きます。

最初は不気味で近寄り難かった大家のおばあちゃんとの奇妙な「約束」で、
幼い主人公が少しずつ「父の死」から解放されていく。
ありきたりな優しいおばあちゃんではなく、ほのぼのドラマでもないけれど、
最後には心暖まる、静かに心に染みる一冊です。
大切な人を失った女の子が心を取り戻していく過程が秋の光に包まれながら静かに展開していきます。みんな心のどこかに傷を残しながら、この世の中を生きていて、でも長い人生も悪くないな、明日もがんばろうと勇気を与えられるような1冊です。
作品を読んでいる間中、いや読み終わった後も、作品が紡ぎだす光景が
まるで自分の記憶のように目の前に繰り広げられる。
そんなふうに登場人物や場面が鮮やかに描かれている作品だった。

窓から見える大きなポプラの木。
しわくちゃで仏頂面の大家のおばあさん。
少しやつれて生活に疲れている母親。
次から次へと空から降ってくるポプラの葉。
落ち葉を集めてアパートの前で行う落ち葉たき。
通りがかりの見知らぬ人と食べる熱々の焼き芋。

作品を読んでいるわずかの間に、幼い頃の自分の思い出と重なり合い、
共鳴し、懐かしさを覚えるほど、登場人物たちに愛着を抱くようになる。
その過程があまりに自然だったため、私は作品終盤を迎えるまで、
自分がヒロイン達に愛情や愛着を 抱いていることにすら気付かないでいた。
ヒロインがおばあさんのお葬式のために、ポプラ荘を訪ねる辺りからは
自分の感情を全くコントロールすることができなかった。

私たちは、いつも「死」を遠いところに考えている。
けれど、誰にでも必ず訪れる「死」をないものとして扱うことはできない。
私たちはもっと、死が特別なものではないこと、 必要以上に怖がらなくても
いいことを知って、「死」について考えなければいけないと思うのだ。
この作品のヒロインは、おばあさんのお葬式で、幼い頃の父親の死を見つめなおす。
そのラストに、「死」を遠ざけず、きちんと見つめることで始まることもある。
そう思った。
『夏の庭』がよかったので、文庫書き下ろしのこれを読んだのだった。死、という一本のレールにのって主人公やその母、お婆、周囲のひとびとの各駅停車の物語が紡ぎだされていく。亡くなったことに、向き合うには、相応のふさわしい時期がやってくるのかもしれないね、何度も、繰り返して。
つらいつらい時期に出会った本です。
本を手にする気にもなれない時期、寂しげな題名にひかれて手にとって。
このお話で、どんなに癒されたことか・・・。
何度も何度も読んで、ようやく立ち直れた、かけがえのない一冊です。
また、生きていかなくちゃと思わせてくれました。

女の子の視点が、それはそれは切実で切なくてかわいらしくて。

一番大切な本です。