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ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)

出版社 中央公論社
著者 本川 達雄
発売日 1992-08

この本に関する書評

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Amazonレビュー

 面白い。我々の感覚からすれば誰にも時間は一定のようであるが、体のサイズによって実感する時間の感覚も異なるという。筆者によると人間は空間把握能力はあるが、時間と力に対する感覚が発達していないために、なかなか他の生物を理解できないらしい。確かにそうかもしれない。動物が変われば時間も変わるのである。しかし都市に生きる我々現代人の時間の感覚は果たして適切なものなのであろうか。
「なぜその大きさなのか?なぜそんな形なのか?」を考えると
各々の生物の生き残りの戦略が見えてくる。扱う生物はゾウ
、ネズミから微生物、植物、昆虫、サンゴ、ウニなど幅広く
、一読するだけで広範な生物の知識がつく。島の法則、車輪
生物など各部に埋め込まれた思考実験も愉しい。
 ネズミとゾウと比べるとネズミの方が短命でゾウは長生きするものと思い込んでいる。しかし、「大きいことはいいことか」でサイズが大きいと色々利点もあるが、一世代の期間も長いので、克服できないような大きい環境変化に出会うと新しい異種を生み出せず絶滅しまう可能性が高いと説く。
 動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、相対的には時間の流れる速さが違ってくる。行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。ところが、一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は、サイズによらず同じ。本書はサイズからの発想によって動物のデザインを発見し、その動物のよって立つ論理を人間に理解可能なものにする「新しい生物学入門書」であり、かつ人類の将来に警鐘を鳴らす生命の書」でもある。
 生物において、人間を絶対的な基準とするのではなく、人間が人間たる理由を考えさせられる。
 更には『宇宙からの帰還』の「地球の時間」と「月の時間」の違いも考え合わせたくなる。
「輪廻転生」「生々流転」…次の代に何に生まれ変わろうが、大差なき生き物の命の不可思議平等。
すごくわかりやすくて面白いです

巻末の付録にゾウとネズミの時間の進み方の違いの歌(?)が楽譜付きで載っています。
歌う先生で有名な方ですからね。

でも結局なぜ生体時間がサイズの3/4乗に比例するのかはナゾのまま終わります。
もろもろの因子が書け合わされて3/4で近似しやすくなるということで、3/4自体には物理的な意義はないんじゃないかとおもいます。
なんか書評じゃなくなってしまいました・・・

粘性に支配される世界と慣性に支配される世界
車輪動物がなぜいないか  などといった本論とは少し離れた話も興味深いものが多いですね
 タイトルや宣伝文句だけを聞いていたとき、これは時間の流れ方を
主題にした本だと思っていた。

 それは確かに、この本で取り上げられている最もおもしろい話題だ
ろう。動物が一生で刻む心拍の総数が動物の寿命に関わらずほぼ一定
であるという事実は、動物のサイズによる時間の感じ方の違いに関係
あるのかもしれないという推測は非常におもしろい。しかし、この本
では、この推測をいたずらにもてあそんで、時間の流れ方について哲
学的に論ずるという科学的ではなく主観的な方向に議論をもっていく
ことはない。

 この本の本当のおもしろさは、第一に、動物の食事の量、生息密度、
移動速度などが、動物のサイズとこんなにもシンプルな関係を持って
いるのか(しかも、単純な比例関係ではない!)という驚くべき事実
を紹介していることである。第二に、それも含めて、動物のサイズや
機能、体の構造が、こんなにも自然の物理法則の制約を受けて合理的
に決まっているのか、という驚きである。

 大きい動物ほど強いのに、なぜ小さい動物も生き残っているのか?
車輪は移動のエネルギー効率がよいのに、なぜ足の代わりに車輪を使
う動物はいないのか?昆虫はなぜ、小さいときにはイモムシで、その
あと成虫の形に変身するのか?なぜ、イモムシの時には葉っぱを食べ、
成虫になると蜜などを吸うのか?なぜ、貝は同じような渦巻きの形を
しているのか?
 こうした問いにも次々に答えてくれる。

 この本で取り上げられている内容は、この分野の研究者にとっては
古くから論じられていることのようである。しかし、こんなにおもし
ろいことが、この本が出版されるまで、ほとんどの一般の日本人には
知られていなかった。これは著者の偉大な功績であると思うが、こう
したおもしろいことが、他の分野にもたくさんあるとしたら、各分野
の研究者たちはぜひとも一般の人にわかるように、この本のような本
を書いてもらいたいと感じた。