そして、「0」がだんだんと中世以降のヨーロッパで認められていく過程や、「0」が生み出したともいえる新発見などに話が移っていく。そして最後は数学から離れて、20世紀以降の物理学や天文学で扱われてきた「0」の話になる。
「0」というテーマは、けっこう壮大なものかなと思っていたが、本編のボリュームは標準的な240ページほど。たとえば『エレガントな宇宙』や『フェルマーの最終定理』などの分厚い海外ノンフィクションに比べると、人物の紹介やエピソードなどはエッセンスだけに絞って、いくぶん抑えてかかれてあるような気がした。
「0」と表裏一体の関係の「無限大」についての話も、「0」についてと同じぐらいの分量で出てくる。それほどまで「0」と「無限大」は切っても切れないものということか。
専門的でものすごく難しいことが書かれているわけではないが、少しは数学や物理の知識があったほうが、つまずかずに読み進めることができるだろう。学校で数学の勉強をまあしっかりやっていて、相対性理論や量子力学の初歩をかじったことのある方ならば付いていける。また、「ある数を0で割ると、その答えは無限大になる」といったことをあらかじめ知っておいた上で読めば、よりすんなりいくと思う(そうした話があまり説明なしで出てくるから)。
素晴らしいことに昔の人々は、存在の無いものを「0」として存在させて、世の中の仕組みをよりわかりやすいものにした。こうした話を読むと、「0」の発見とは言わないまでも、単純でありながらまだ発見されていない「便利なもの」が、世の中には眠っているのかもしれないと思えてくる。