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暗夜/戦争の悲しみ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-6)

暗夜/戦争の悲しみ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-6)

出版社 河出書房新社
著者 バオ・ニン 残雪
発売日 2008-08-09

この本に関する書評

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Amazonレビュー

 偶然、NHK教育の「知る楽」を観ていて、池澤夏樹さんの解説でこの世界文学全集を知った。
 放送では後半に収録されている「戦争の悲しみ」を解説していたが、この『暗夜』を先に読んだ。「阿梅(アーメイ)」「ある太陽の日の愁い」「私のあの世界でのこと・・・友へ」「帰り道」「痕(ヘン)」「不思議な木の家」「世外の桃源」「暗夜」の6つの短編から成っている。どれも面白い。解説に書いてあるように、尾崎翠の「第七官界彷徨」などの作品を彷彿とするように思えるが、もっと身近に感じられた。
 私は自分の見る夢を時々書いてみているが、うまくいかないことが多い。現実に近いことと非現実な出来事とが入り交じって、時間が飛んでいくようでもあり、止まっているようでもあり、とても難しい。
 残雪は、夢のような物語の虚実・時間・空間の飛躍を滑らかに表現している。しかも主人公の感情や疑問は、恐怖と喜び、期待と失望、死と生などのへの根源的な問いを含んでいる。かといって深刻でもなく、むしろ読後感は爽やかだ。
 ボルヘスの『伝奇集』を思い出させるようでもあった。
 中国文学では若い作家らによる短編集『じゃがいも』を読んだことがあるが、これらはリアリズムでとても面白かったが、『暗夜』はまた違った中国文学の素晴らしさを教えてくれる。
世界文学全集の1冊。毎月刊行されるこのシリーズを読むのを楽しみにしているが、今回は、初めて読む著者。というか名前を聞いたのも初めてだった。
外国文学といったら欧米の文学、特に最近は英語圏のものしか読んでない。勉強不足だった。

『暗夜』は不思議な小説で、筋も良く分からず、ただ、独特な雰囲気に取り込まれていく。

『戦争の悲しみ』は題名のとおり、ベトナム戦争の悲惨さを描いている。言葉にすると簡単だが、内容は深い。ベトナム戦争についてはアメリカ側から描いたものや日本の従軍記者たちが書いたレポルタージュとかは昔読んだことがあったけど、ベトナムの当事者が書いたものを読んだのは初めてで、戦争の体験がいかに悲惨なものかを痛烈に訴えかけられる。
しかし、この小説は、それだけではなく、大きな歴史の流れに翻弄される悲しく切ない愛の物語だ。胸を打たれた。映画化されてもいいぐらいの美しいストーリー。
「残雪」はペンネームだそうだ。ここに収まっているのは7つの短編だが、とても面白い。単純に、「面白い」のである。なおかつ「不思議な」物語だ。この感覚はフランツ・カフカの作品を思わせる、ということは私に限らず、池澤夏樹氏や近藤直子女史もうなずいているところ。ヘンな読後感だが、まったく重苦しくない。ここもカフカに似ているだろう。
初めて中国文芸作品に触れる、という方にもお勧めである。また書くが、基本的に「おもしろい」のである。この優れた翻訳は学校の国語教科書に載っていてもまったく不思議ではない。
バオ・ニン「戦争の悲しみ」は、文字通り悲しい愛の物語である。タイトルだけ見ると、ヴェトナム戦争批判作品だと誤解する方もいるかもしれない。だが、お読みになられた方にならわかるが、単純な戦争糾弾文芸ではない。ある意味で、ただ戦争の愚かさを前面に出してしまったほうが、(北ヴェトナム軍に入団経験のある)バオ・ニンにとっては簡単なことだっただろう。だが、彼にとって愚かなのは戦争でも米軍でもなんでもなく、「人間」なのだ。人間の本質こそ、彼の糾弾すべき対象なのだ。暴力、殺人に明け暮れ、人間らしい暮らしを送る意義を見出せない人間こそ、愚かな存在なのだ。私はページをめくるたびに、何度かため息が出てしまうのだ、「人間は進歩を知らない生き物なのだろうか」と。バオ・ニンが直接どう感じていたのかは正確にはわからない。けれど、彼だって信じていたはずだ。登場人物のキエンのように、人間にだって、努力すれば、進歩できるだろう、と。もちろん、私だって信じたいことであるが。