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格差と希望―誰が損をしているか?

格差と希望―誰が損をしているか?

出版社 筑摩書房
著者 大竹 文雄
発売日 2008-06

この本に関する書評

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Amazonレビュー

過去の新聞、雑誌に掲載した原稿をまとめた1冊だが、
えらく硬質で難解、かつ本質的な指摘が数多くある、
骨太な1冊だ。
新聞に掲載されているということは、
実は文章は読みやすく分かりやすいのだが、
内容が難しいという、
ちょっとやっかいな特徴がある。

本書は2006年に書かれた文章が多く、
「今とは違う」日本の姿が描かれている。
格差社会の問題も、ワーキングプアが主題であるし、
雇用の問題も正規、非正規の問題として認識されている。
貧困や派遣といった08年にクローズアップされた問題が、
まだまだ副次的な課題認識のレベルにとどまっている。
世の中が変わったことに愕然とした。

本書の指摘の中では、
格差の原因として是非を問われることが多い、
規制緩和に関して、
弱者というくくりに、
「実際の弱者である若者」と「実は規制緩和で既得権を失う中高年」が、
同居していることを解説しているが、
これが一番インパクトのある指摘であった。

社会学の本ばかり読むのではなく、
たまには経済学の本を読むべくだと思った。
視野が広がる。
1.答え、ならびに要約
題名の答えは、損をしているのは非正規雇用の若者である。すなわち、1990年代までの所得格差は、高齢化が原因だったが、非正規雇用の若者が増えて、若者の間での所得格差が軽視できない状況になりつつあるそうだ。その他、日本経済新聞や、週刊東洋経済などに掲載した経済学的エッセイをまとめたものといえる。非正規雇用の若者だけを扱った本ではない。
2.評価
(1)正直、結論が妥当だと思うところが少なかった。経済学ばかり振りかざすので(幅広い教養がない(失礼だが、表現が思い浮かばなかった。私の教養のなさがあらわに)のが原因か)、「あいつは経済人だ」(我妻栄『民法案内1 私法の道しるべ』p51(一粒社)のパロディー)とツッコミを入れたくなる内容。
(2)根拠が明らかではないところが多かった。たとえば、「標準」じゃわからないよ。参照文献ぐらい挙げないと。
(3)反対説は「感情論」と斬り捨て。経済学的見方に徹底し、「私の経済学ではこうなる」ぐらいに書けばいいのに。「感情論」の中には、倫理的、法的価値判断もあろうに。
(4)矛盾が結構ある。一例を挙げると、p55では、「社会保険に再分配機能を期待するのは間違っている」とあるが、p91では、「所得再分配は、(中略)社会保障で行なうべきである」とある。社会保険って社会保障の1つじゃなかったっけ?もう一例、p72〜で、戦力均衡は選手の移動が自由でも保たれるはずなのに、なぜドラフト制を提言するのか(ドラフトは選手の移動の制約を前提としている)。
(5)格差解消に教育や訓練の充実を掲げるのはよいが、需要がなければ職に就けない人もあるので、限界もあろう。労働条件の平等性をもっと強調したほうがよいと思った。
3.結論 大竹経済学の一端を示す(これで星1つは免れている)以上の価値がないので、星2つ。
副題:誰が損をしているか?

初めに書いておくと、日本学士院賞を取った方と言うバイアスがある。
ノーベル賞と同じく長生きしないと取れないとも言われるこの賞を1961年生まれの著者が2008年に受賞。

さて、本書は日本経済新聞等に2005年から2007年の間に起こった経済関連の動きをコメントしたもの。さらに追記を加えて日本経済の問題点等を指摘している。

ただ、どうしても貨幣と言うものを評価基準にしているだけで、其処に哲学や思想、あるいは人間の豊かさとか幸福と言った文脈が見えてこないと思うのは小市民的発想なのだろうか。
盛んに制度の問題等を指摘されるが、なぜか身体性の欠如した脳化した社会だけが其処に見えてきてしまいます。
多くの賞を受賞したという「日本の不平等」を読んでさらに考えて行きたいと思う。

幾つか備忘録的にメモしておく。
「ねずみ講」的な公的年金制度。既得権益者(高齢者、団塊の世代)
格差という言葉(定義)の多義性と所得格差の日米間での認識差異
若年層の格差問題解決は教育改革と既存社員の賃金カット
既得権重視の政策重視は一時的に既得権者に幸福感を与えるが、結局は全員が被害を受ける。
悪玉論は心地よいが結局は一時的であり解決策にはなりえない。
理性から感情へは自らの自由を毀損していき、大衆迎合主義に支配される社会になる。
既得権を打破しないと若者の潜在力を発揮することは出来ない(赤木智弘氏の「丸山眞男」をひっぱたきたい、を例に)
奇妙な再分配を避けるには過去や他人との比較から逃れて、将来に目を向け、絶対水準でものを考えることが必要。
格差に関する実証研究の蓄積が必要である。
本書を
お勧めしたい向きは、普段から、大竹氏の論調に関心があり、
まとめて、テーマ別・時系列的に読んでみたいと思う方だ。

お勧めしない向きは、そもそも過去に書き連ねた論文を
並べるという(直近の追加コメントはあるにしても)本の
作り方が嫌いな方だ。

私自身はいやしくも「本」として世に問うのならば、
最新のデータと論調を踏まえて、書き下ろすべきだという
考え方なので、大竹氏の個別の論点で傾聴すべきところは
あると思いつつ、「本」としての評価は低くなってしまう。
 新聞・雑誌発表の各論者の言も参考にし、それに補足などして自身の論を構成し、各紙・誌に発表したコラムを書籍化したもの。

 曰く
 ☆解雇規制強化は、正規・非正規労働者の双方に負担を与える。

 ☆評価システムは、非効率で暇な部門ほど優れた資料作成可能であり、当初の目的に反して、素晴らしく評価されるおそれがある。

 ☆年金制度を個人勘定の積み立て方式と、税によるセーフティネット方式に変えるべきだが、利得者たる高齢者の人口・投票率が多すぎて、政治家はそこに踏み込めない。

 ☆他国が既に行っているように、政府統計を研究者向けに公開して、世界の研究者の提言を、政策提案に利用すべし。
 
 ☆格差社会の出現は、年功序列システムの延命の為、各個人が自身の賃金を下ぬ事に固執するあまり、新規雇用を阻み、生産性弱者を排除することで発生した。

 ☆市場競争に関する既得権者と弱者の、規制緩和反対「共謀」

 上辺でなく本質的な問題点に言及し、顕在化させた良書であり、2004年の文章もあるが追記でフォローされているのにも好感をもてたが、教育に関しては、具体論にまで及んでおらず、残念ながら☆1つ減点した。